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指揮者 横島勝人の公式ウェブサイト

Conductor Katsuto Yokoshima Official Website 

「モーツァルトのレクイエム」考

カルロス・クライバー

今年は3つの演奏会でブラームスの交響曲を4番、3番、2番と演奏します。

(残り1番を演奏するとチクルスになりますが。)

来月3月13日に奈良フィルハーモニーと演奏する4番には、特によい思い出があるんです。

ウィーンに住んでいた頃イタリアまでわざわざ4番を聴きに行ったことがあります。

その時は初め、指揮者の友人とロシアへ講習会に行く予定でした。

それも、今は亡きイリヤ・ムーシン先生(ゲルギエフの師匠)の講習会。

とても楽しみにしていました。

ところがムーシン先生の体調の都合で突然中止の知らせが入ってきました。

友人と「残念会でもしよう」と話していた矢先、日本の知人からFAXが届きました。

なんと、“カルロス・クライバーがイタリアのラヴェンナ音楽祭で振る”というのです。それも3日後。

突然飛び込んできたビッグニュースに、友人と2人で大騒ぎ。

それからもう準備が大変でした。

何とかチケットの予約を入れ、ロシアではなくイタリアへ、ムーシンではなくクライバーを聴きに行くことになりました。

「本当に振るのかな?」と移動中はずっとそのことばかり話していました。

ラヴェンナに着いてクライバーのコンサートのポスターを見つけ、「ホントに振るんだ」と少し安心して会場に向かいました。

ところが着いた所はアリーナのような会場。音響も良さそうではありません。

「こんなところで?」「本当に振ってくれるの?」と思いながら静かに開演を待っていると、会場が暗くなりステージ奥の扉が開きました。

現れました。間違いなくカルロス・クライバーでした。

それからコンサートが終わるまで・・・幸せでした。

音の1つ1つが心にずんずんと入ってきて、フレーズの美しさを体中で感じました。

決して良い響きのホールで聴いた訳でもないのにこの感動! 信じられんませんでした。

もしかして音楽ってこれかな?って思いました。

音楽の力ってこういう事なのかなって。

ヨーロッパにいて、探している物にまたひとつ出会えた様な気がしました。

ホテルへの帰り道、、友人と小さいレストランで話をしました。

本物について、本質について、そして音楽の力について。

私が演奏の中でいつも考えている事のひとつが、音楽の力です。音楽力です。

今日まで演奏され続けている名曲は、とてつもない感動を秘めた曲ばかりなんだと思います。

そして、その名曲の秘めた力を見つけ出し、引き出していくことが私たちの仕事だと思っています。

音楽の力を充分に引き出した名指揮者カルロス・クライバー。

彼の音楽に直に触れられたこと、本当に幸せだったと思っています。

Copyright (C) 2014 Katsuto Yokoshima. All rights reserved.

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